後遺障害とは
もくじ
後遺症は、交通事故での受傷について治療を受けたものの、治癒せず残存した障害。
後遺障害は、後遺症のうち損害保険料率算出機構によって後遺障害認定された(後遺障害等級が認定された)ものを言います。
後遺障害認定された障害のみが、後遺障害として賠償されます。また賠償額は、逸失利益(事後前の収入に自賠責保険の基準の各等級による労働能力喪失率をかけ中間利息を控除した額)と、各等級による慰謝料額となります。
後遺障害の種類は自賠責保険の後遺障害の等級表に定められています。
自転車・単車を運転中に交通事故で受傷し、路面にお尻から「どすん」と転落したり、自動車同士の場合は、横転、一回転したケースに多く発生します。
脊柱の圧迫骨折のために頸部および腰部両方の保持に困難があるため、常時、硬性コルセットを必要とするものは6級に、頸部および腰部のいずれからの保持に困難があるため、常時、硬性コルセットを必要とするものはと、8級に該当します。
●頭部・顔面・頸部の醜状障害
7級:著しい醜状 |
原則として次のいずれかに該当する場合で人目につく程度以上のものをいうとされます。 頭部 手のひら大(指の部分は含みません。以下同じ)以上の瘢痕又は頭蓋骨の手のひら大以上の欠損 顔面部 にわとりの卵大面以上の瘢痕または、10円硬貨大以上の組織陥没頸部 手のひら大以上の瘢痕 |
9級:相当程度の醜状を残すもの |
原則として顔面部の長さ5cm以上の線上痕で、人目につく程度以上のものをいうとされます。 |
12級:外貌に醜状を残すもの |
頭部 にわとりの卵大以上の瘢痕または、頭蓋骨のにわとりの卵大以上の欠損 顔面部 10円硬貨以上の瘢痕又は長さ3cm以上の線上痕跡 頸部 にわとりの卵大面以上の瘢痕 |
●上肢(肩・肘・手首・手指)の後遺障害
欠損障害の後遺障害等級
上肢の欠損障害 |
両上肢を肘関節以上で失ったものは 1級7号 両上肢を手関節以上で失ったものは 2級3号 1上肢を肘関節以上で失ったものは 4級4号 1上肢を手関節以上で失ったものは 5級4号 |
手指の欠損障害 |
両手の手指を全部失ったもの(親指にあっては指節間関節、その他の指にあっては 近位指節間関節以上を失ったもの)は3級5号 1手の5の手指または親指を含み4の手指を失ったものは6級8号 1手の親指を含み3の手指を失ったものまたは親指以外の4の手指を失ったものは7級6号 1手の親指を含み2の手指を失ったものまたは親指以外の3の手指を失ったものは8級3号 1手の親指または親指以外の2の手指を失ったものは9級12号 1手の小指を失ったものは12級9号 1手の親指の指骨の一部を失ったものは13級7号 1手の親指以外の手指の指骨の一部を失ったものは14級6号 |
手指の用廃 |
両手の手指を全部の用を廃したものは4級6号 1手の5の手指または親指を含み4の手指の用を廃したものは7級7号 1手の親指を含み3の手指の用を廃したものまたは親指以外の4の手指の用を廃したものは8級4号 1手の親指を含み2の手指の用を廃したものまたは親指以外の3の手指の用を廃したもの9級13号 1手の親指または親指以外の2の手指の用を廃したものは10級7号 1手の人差し指、中指または薬指の用を廃したものは12級10号 1手の小指の用を廃したものは、13級6号 1手の親指以外の手指の遠位指間関節を屈伸することができなくなったものは14級7号 |
上肢の機能障害
上肢の用廃 |
両上肢用廃は1級4号 1上肢用廃は5級6号 |
関節の用廃 |
2関節の用廃は6級6号 1関節の用廃は8級6号 著しい機能障害10級10号 機能障害12級6号 |
偽関節と関節
上腕骨及び堯骨・尺骨の偽関節 |
1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すものは7級9号 1上肢に偽関節を残すものは8級8号 長管骨に変形を残すものは12級8号 |
堯骨又は尺骨の偽関節 |
堯骨または尺骨の一方に偽関節を残し、物を保持したり移動するのに時々、硬性補装具を必要とするものは8級8号 長管骨に変形を残すものは12級8号 上腕骨、堯骨又は尺骨の遠位端部の偽関節は12級8号 上肢の長管骨の変形障害は12級8号 |
腕骨、堯骨又は尺骨の遠位端部の偽関節 |
12級8号 |
上肢の長管骨の変形障害 |
12級8号 |
肘・手関節の動揺関節と肩関節の習慣性脱臼 |
労働に支障があり、常時固定装具を必要とするものは、著しい機能障害として10級10号 労働に多少の支障があっても、固定装具の装着を常時必要としないものは、障害を残すものとして12級6号 習慣性脱臼は、関節の機能に障害を残すものとして12級6号 亜脱臼以上は受傷後6か月で症状固定すれば12級6号の後遺障害が認定される |
上肢の人工骨・人工関節と関節の機能障害 |
人工骨頭または人工関節を挿入置換し、かつ当該関節の可動域角度が健側の2分の1以下に制限されたものは8級6号 人工骨頭または人工関節を挿入置換したものは10級10号 |
●下肢の後遺障害
欠損障害の後遺障害等級
下肢の欠損障害 |
両下肢を膝関節以上で失ったものは 1級5号 両上肢を足関節以上で失ったものは 2級4号 1上肢を膝関節以上で失ったものは 4級5号 両足をリスラン関節以上で失ったものは4級7号 1上肢を足関節以上で失ったものは 5級5号 1足をリスラン関節以上で失ったものは7級8号 |
足指の欠損障害 |
両足の足指を全部失ったものは5級8号 1足の足指の全部を失ったものは8級10号 1足の母趾(足の親指)を含み2以上の足指を失ったもの9級14号 1足の母趾(足の親指)または他の4の足指を失ったもの10級9号 1足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2の足指を失ったものまたは第3の足指を失ったものは、12級11号 1足の第3の足指以下の1または2の足指を失ったもの13級9号 |
下肢の機能障害
足指の機能障害 |
両足の足指の全の用を廃したものは7級11号 1足の足指の全部の用を廃したものは9級15号 1足の母趾または他の4の足指の用を廃したもの11級9号 1足の母趾(足の親指)を含み2以上の足指の用を廃したもの12級12号 1足の第2の足指の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したものまたは第3の足指以下の3の足指の用を廃したものは、13級10号 1足の第3の足指以下の1以下の1または2の足指を用を廃したものは14級8号 |
下肢関節の機能障害 |
下肢の用を全廃 両下肢用廃は1級6号 1下肢用廃は5級7号 |
関節の用廃 |
2関節の用廃は6級7号 1関節の用廃は8級7号 著しい機能障害10級11号 機能障害12級7号 |
下肢の奇形障害
大腿骨及び脛骨・腓骨の偽関節 |
大腿骨に異常可動性を有する偽関節を残し、硬性補装具を常に必要とするもの、脛骨に異常可動性を有する偽関節を残し、硬性補装具を常に必要とするものは、7級10号 脛骨および腓骨に偽関節を残するもので、立位や歩行に時々、硬性補装具を必要とするものは、8級9号 腓骨に偽関節を残すものは12級8号 大腿骨又は腓骨の遠位端部の偽関節、長管骨の変形、回旋変形癒合、大腿骨または脛骨、腓骨の遠位タンブノ欠損、大腿骨まため脛骨の直径の減少は12級8号 |
下肢の関節に人工骨頭や人工関節が置換された場合 |
人工骨董または人工関節を挿入置換し、かつ当該関節の可動域角度が健側の2分の1以下に制限されたものは、8級7号 人工骨董または人工関節を挿入置換しは10級11号 |
下肢の短縮障害 |
1下肢を5㎝以上短縮したものは 8級5号 1下肢を3㎝以上短縮したものは 10級8号 1下肢を1㎝以上短縮したものは 13級8号 |
脊髄は、脳と身体の部分を結んで信号を伝える連絡路の役割を果たす器官です。
脊髄が損傷された場合、四肢麻痺あるいは対麻痺(下半身麻痺)となることが多く、麻痺の範囲は、脊髄損傷の生じた高位(部位)によって異なります。脊髄損傷は、どの高さの部位で損傷を受けたかで、発現する運動、間隔障害の範囲が定まるので(例えば、頸髄が損傷されると四肢麻痺が生じ、第2腰髄から上が損傷されると、下肢全体が完全に麻痺したり、不完全麻痺になります)、MRI、CT等による画像診断及び臨床所見によって損傷の高位を診断することになります。また、脊髄全断面にわたって生じた場合と、いずれか反側又は一部に生じた場合とによって、症状が異なるので、この点における診断(横断位診断)も重要となります。
脊髄が損傷された場合、四肢麻痺や対麻痺、広範囲にわたる感覚障害など複雑な症状が現れることが多いのですが、脊髄損傷が生じた場合の後遺障害等級の認定は、原則として(脳の身体性機能障害と同様に)身体所見及びMRI、CT等によって裏付けることのできる麻痺の範囲と程度により障害等級を認定することになります。
鎖骨、肋骨、肩甲骨または骨盤骨に著しい奇形を残すものは、12級5号となります。
口の中の後遺障害としては、「咀嚼」「言語」の機能障害、「歯」に対し歯科補綴を加えたもの等です。
1級2号 |
咀嚼及び言語の機能を廃したもの 咀嚼の機能を廃したとは、味噌汁やスープ等の流動食以外は摂取できないものをいいます。 |
3級2号 |
咀嚼又は言語の機能を廃したもの |
4級 |
咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの 咀嚼の機能に著しい障害を残すものとは、おかゆ又はこれに準ずる程度の飲食物以外は摂取できないものをいいます。 |
9級 |
咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの 固形食物の中にそしゃくができないものがあること又はそしゃくが十分にできないものがあり、そのことが医学的に確認できる場合をいいます。 医学的に確認できる場合とは、不正咬合、そしゃく関与筋群の異常、顎関節の障害、閉口障害、歯牙損傷(補てつができない場合)等咀嚼ができないものがあること又はそしゃくが十分にできないものがあることの原因が医学的に確認できることをいいます。 |
9級10号 |
通常の労務はできますが激しい頭痛により、時には労働に従事することができなくなる場合があるため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるものをいいます。 |
12級13号 |
通常の労務はできますが、時には労働に差し支える程度の強い頭痛がおこるものをいいます。 |
14級9号 |
通常の労務はできますが、頭痛が頻回に発現しやすくなったものをいいます。 |
交通事故に伴う、脳の外傷により、てんかんを発症する可能性のある場合
脳波検査でてんかん波のスパイク波が認められる場合は、後遺障害が認めらられます(9級10号)。
意識障害を伴うてんかん発作を発症している場合は、1~7級の後遺障害が認められます。
高次脳機能障害とは、認知、行為、記憶、思考、判断、言語、注意などが障害された状態で、全般的な障害として意識障害や認知症も含みます。
以下ような4つの脳の機能に障害が生じ、仕事や日常生活に支障を来す症状が現れます。
①記銘・記憶力、認知力、言語力などの意思疎通
新しいことが覚えられない、名前が出てこない等
②理解力・判断力などの問題解決能力
自分で計画を立てられない、手順どおり仕事を進められない等
③作業負荷に対する持続力・持久力
気が散って集中できない、仕事が続かない等
④協調性等の社会行動能力
すぐに怒りだしたり、感情のコントロールができない、じっとしていられない等
その症状が複数の障害が認められるときには、原則として障害の程度の最も重いものに着目して評価することになります。
高次脳機能障害の認定を受けるには一定期間の意識障害が継続したことが必要です。自賠責保険の認定手続の認定手続では医師の作成した頭部外傷後の意識障害に関する所見が必要となります。
◎交通事故による高次脳機能障害の診断
上記所見に加え医師作成の神経系統の障害に関する医学的所見、家族等が作成した日常生活状況報告を提出して高次脳機能障害に該当するか判断されることになります。
高次脳機能障害 |
常に介護を要するものは1級3号 随時介護を要するものは2級3号 終身労務に服することができないものは3級3号 特に軽易な労務以外に労務に服することができないものは5級2号 軽易な労務以外に労務に服することができないものは7級4号 服することができる労務が相当な程度に制限されるのは9級10号 |
バイク運転中に自動車と接触し、頭を打ち、脳室内出血、外傷性水頭症となったケースで頭部画像上、脳内出血や脳室拡大が認められるとして、高次脳機能障害の後遺障害が認められ、神経系統の障害に関する意見書や、長谷川式簡易知能検査、日常生活状況報告から服することができる労務が相当な程度に制限されるのは9級10号に該当すると判断されました。
交通事故に遭われた方のなかで多い症状がむちうちで、診断書には外傷性頚部症候群、頸椎捻挫等と記載されます。むちうちの自覚症状としては、一般的に頚部痛、圧迫感・緊張感、吐き気・頭痛、しびれ等です。
事故などの外傷により、焼けるような激しい疼痛と赤いまだら状の皮膚をともなった状態となります。
原因は、まだ完全には解明されていませんが、外傷などによって交感神経が過剰に興奮し、末梢血管運動異常による血行障害と疼痛の悪循環を繰り返すことが考えられています。被害者は、痛みで苦しむことになりますが、他覚所見が乏しいために、適切な等級・賠償を得ることが難しい後遺症でもあります。
RSD(反射交換神経性ジストロフィー) |
軽易な労務以外の労働に常に差し支える程度の疼痛があるものは7級 通常の労務に服することはできるが、疼痛によりときには労働に従事することができなくなるため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるものは9級 通常の労務に服することはできるが、ときには労働に差し支える程度の疼痛が起こるものは12級 通常の労務に服することはできるが、受傷部位にほとんど常時疼痛を残すものは14級 |
後遺障害等級12級と14級の違いはどこにあるのでしょうか?
医学的検査所見や画像所見などの他覚的所見により、医学的に証明しうるものは12級13号となります。
他覚的所見はないが、受傷時の状態や治療経過などから連続性・一貫性が認められ説明可能な症状であり、単なる故意の誇張でないと医学的に推定されるものが14級9号となります。
具体的には
首の周辺の筋肉や靱帯の軟部組織の炎症に止まるものは該当しません。
肩から手指にかけて重さ感、だるさ感、痛み、痺れなどの症状がある場合は神経根に障害を残すものとして後遺障害の対象となります。