別居中の生活費と離婚手続
もくじ
夫婦が別居後に使った生活費のことを婚姻費用といいます。離婚を求め別居していても、離婚成立までは収入の多い配偶者に対し、婚姻費用として生活費を払ってもらう権利があります。婚姻費用を受け取っていることは離婚に不利な事情とはなりません。
収入の多い配偶者が任意に婚姻費用を支払わない場合には、家庭裁判所に婚姻費用分担調停を申し立て、支払いを求めることになります。
下記の算定表の金額に特別経費(私学の学費、習い事等)を収入で按分して加算して負担することになります。
調停の場合には、原則として申立てをした月以降の分しか婚姻費用を請求できず、また調停成立までには通常、申立てから数ヶ月~半年を要しますので、生活が苦しくなる前に早めに申立てることが望ましいです。
《裁判所の婚姻費用との算定表》
平成30年度司法研究(養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について[外部リンク]
婚姻費用、養育費については、裁判所が算定表を作成しており、双方の年収と子どもの年齢によって機械的に決まります。
《算定例》
夫会社員の源泉徴収票の支払額498万円、妻自営所得304万円の子8歳の夫婦の場合、別居して、妻が子をみている場合、裁判所の算定表(表11)婚姻費用・子1人表(子0~14歳)を使用して、義務者は夫ですので、498万円に一番近い縦軸給与500万円、権利者は妻ですので、304万円に一部近い横軸自営312万円をとり、夫は横線、妻は縦線で交わる4万円から6万円となり、目盛りが4ですので5000円×3=1万5000円で4万5000円となります。
養育費についても同様に、裁判所の算定表(表1)養育費・子1人表(子0~14歳)を使用して、500万円と294万円で、2万~4万円となり、目盛りが10ありますので、2000円×9=1万8000円で3万8000円となります。これに双方が承認していた義務教育以外の費用(大学、私学、塾、習い事)の費用を加えます。
学校費用については、公立高校26万円、公立中学13万円、公立小学校6万円を差引後の金額を特別経費とします。特別経費については、職業費を除く基礎収入割合(生活費)の割合で負担します。
婚姻費用は、夫婦双方の年収額、子の人数及び年齢により算定します。
同居中であれば、配偶者の収入資料を入手する方法もありますので、別居する前にまずは弁護士にご相談されることをオススメします。
離婚だけ成立させようとしてしまうと、婚費がもらえない、慰謝料は別に地方裁判所で裁判をしないといけないといった面倒なことになります。
離婚だけ成立させることは慎重に考える必要があります。
離婚の手続きには、協議離婚、離婚調停、裁判離婚(離婚訴訟)の3つの方法があります。
協議離婚
離婚は、夫婦の双方が離婚届に署名押印して届出すれば成立します。
◎親権者の指定
夫婦の間に未成年の子がある場合、その子の親権者をどちらか一方に決めなければ離婚届は受理されません。
◎財産分与・養育費・子との面接交渉
財産分与・養育費・子との面接交渉は、決めなくても離婚はできます。
当事者の協議で決まらない場合には、家庭裁判所に申立れば、調停で話ができます。もし、調停でも決まらない場合は裁判所が審判で決めてくれます。
離婚調停
調停離婚とは、家庭裁判所(第三者)に入ってもらい話し合いで離婚を目指す方法です。具体的には、親権、養育費、面会交流、財産分与、慰謝料、年金分割などについて主張し、適切な条件での合意を目指す手続です。 裁判のような強制力がないため、協議離婚と同様に、相手が全く話し合いに応じない場合は、時間をかけても調停離婚が期待出来ないというデメリットがあります。
しかし、協議離婚と異なる点は、調停委員や裁判官が中立の意見を述べてくれるので、協議でまとまらない場合でも、調停であれば離婚成立を期待できます。
相手方に弁護士がついている場合
子どもの親権で争いがある場合
婚姻費用や養育費で争いがある場合
財産分与で争いがある場合
慰謝料の請求を受けた場合
法的なアドバイスを継続的に受けられる
有利・不利の証拠が選別できる
調停成立後のトラブルを防げる
調停不成立になった場合も審判・訴訟に対応できる
裁判離婚
裁判離婚とは、調停で離婚について夫婦間で合意ができない場合、家庭裁判所に離婚訴訟を提起し、判決で強制的に離婚を成立させる手続きを言います。
判決に対して上級裁判所に不服申立がなければ、離婚判決は確定しますが、戸籍に反映するには調停と同様届け出が必要です。訴訟に至るのは、離婚、親権、財産分与について合意ができない場合が多数です。
などをよく考えた上で決断する必要がありますが、相手方がとんでもない条件を出してくる場合には、訴訟に至らざるを得ないこともあります。